Cortina D'Ampezzo

 

   
 
いよいよ念願のイタリアのスキーリゾート、コルチナ・ダンペッツォに出発。パリからヴェネツィアに飛び、車で2時間ほど走る。朝一番のエール・フランス便に乗るためタクシーを待つも延々と来ない、最近は全てネット予約で電話すら通じず。まだ夜の明けないサンジェルマン大通り、街は見渡す限り一台の車すらいない・・・。
 

 

 
コロナ禍にリニューアル工事を終えたエールフランスの新しいサロン、普段は日帰り出張のビジネスマンでごった返す朝も、イースターホリデーで静まり返っている。 エスプレッソとクロワッサンの朝食も久しぶり、新しいサロンをしばし探検。
 

 

 
機内で離陸を待つ間に夜が明け、美しい朝焼けの滑走路を機体はゆっくり進む。真っ赤な太陽が窓に迫る劇的な離陸、機上でようやく夜が明ける 。
 

 

 
 
コロナ禍で大幅に減便になったヨーロッパ線、航路の変更により駐機場の上を飛ぶ景色も目新しいく、パッチワークのような農地の景色も久しぶり。
 

 

 
真っ青な空を順調に飛行を続けそろそろヴェネチア上空。窓から見える眩しく光る山々に、初めて行くコルチナへの期待も高まる。
 

 

   
 
今回の航路はヴェネチアの隣町、メストレ上空を飛ぶ。初めて上空から見るメストレ、ヴェネツィア本島とは全く違うひなびた街。昔友人の家に泊まった事を思い出す。
 

 

 
 
メストレを過ぎると、不思議な模様の干潟が見えてくる。アルプスから流れる川がイタリア平野の土を運び、アドリア海の潮の流れも絡んで形成される干潟。ヴェネツィア建国時、ぬかるんだこの干潟は天然の要塞だったという。
 

 

   
 
初めて来た30余年前とは隔世の感のある広大なマルコポーロ空港。オーバーサイズラゲージのコーナーは私達のスキーの他に、クレートに入った犬や何台ものベビーバギーが次々に出てくる。赤ちゃんや犬を連れた大所帯のヴァカンス、それもヴェネツィア・・・。何事もはしょらない彼らのスタイルに感服する。
 

 

 
マルコポーロ空港で車を借りるのは初めての事、システムも明快でイタリアとは思えない。アドリア海とは逆のアルプスに向かいコルチナを目指して走り出す。パーキングエリアでカプチーノを飲んでようやくひと休み、道路標識にオーストリアも近い事を実感する。
 

 

 
 
壮大な山をバックに掛かる美しい橋を眺めつつドライブは続く。スイス人の構造家、ロベール・マイヤールの橋のレプリカとか。
 

 

 
一時間半ほど走ると少しずつ集落のような街に入って来る。目をみはるほど壮大なドロミテ山脈をバックに山小屋や教会、ロッジ風の建物が並びいよいよコルチナに来た実感。
 

 

 
ドロミテ山脈が迫るように聳える景色の中をひたすら走り、ようやくコルチナに到着。オリンピックの五輪ではなくアウディの4つの輪に迎えられ、「CORTINA」の文字に長かった旅路を想い感激する。
 

 

 
山に囲まれたコルチナの街、ロッジのようなホテルに到着。可愛らしいロビーには高山植物の押し花やドライフラワー、オリンピックのポスターが並ぶ。
 

 

 
白木のインテリアもスキーロッジらしく、客室の手前にスキーを置く乾燥室のような小部屋があるのも面白い。テラスからは街が一望出来、絵画のような景色に感激しつつようやく一息。
 

 

 
広大なスキー場であるコルチナ・ダンペッツォ。まず初日はファローリアエリア、ここはアルベルト・トンバが少年時代に練習したトンバコースがあるというのも楽しみ。小さな山小屋のようなスキーセンターでリフト券を買いロープウェイを待つ。
 

 

 
ロープウェイが動き出すと昇る度にドロミテ山脈が目の前に迫り来るような素晴らしい景色に息を呑む。向こうに見える壮大なトファーナ連峰をバックに小さなゴンドラがミニチュアのように動く。
 

 

 
ロープウェイから降りると見た事のないパノラミックな景色が広がる。ドロミテ山脈の名前の由来は、1791年にこの山脈の地質は白雲石であることを明らかにしたフランスの地質学者デオダ・ドロミューから来る。それ以来イタリア語で白雲石はイタリア語でドロミテと呼ばれこの山脈もその学者の名前をとったそう。
 

 

 
日本では見かけなくなったTバーリフトに乗りいよいよコルチナ初滑り、垂直に切り立った岩峰が荘厳な景観に向かって滑る。地質学者ドロミューの生地はフランスのグルノーブル郊外にあるドロミュー村と言われ、同じ地名がアルプスを挟んで両側にあるとか。壮大なゲレンデを滑りつつドロミュー博士を想う。
 

 

 
下りのロープウェイはドロミテ山脈にダイヴするように急降下、次々と景色が変わる。チロル・アルプスと呼ばれたこの辺りは、様々な形をした岩峰が連なる壮大で不思議な景色とその美しい岩肌、山腹に刻まれた幾つもの地層の帯模様などが人々を魅了し、多くの地質学者が研究のために入山したという話を思い出し、目を凝らして山々を眺める。
 

 

 
イタリアには約400のスキーリゾートがアルプスの南側にあるという。溢れる陽光とファッションの国イタリアらしい独特の雰囲気は、フランスやオーストリアとは一味違い、その中でも一級の高級リゾートとして知られるコルチナ・ダンペッツォ、山に囲まれた夢のような街を歩く。
 

 

 
2026年、第25回冬季オリンピックの開催が決まっているコルチナ・ダンペッツォ、早くも五輪マークがあちこちに。1956年に日本人の猪谷千春氏が活躍した第7回大会以来、70年ぶり2度目の開催となる。教会の鐘の音を聞きながらプロセッコで乾杯、街行く人々を眺める。今や敬遠されがちな毛皮もココでは超主役、チンチラの専門店 にも驚く。
 

 

 
イタリアン・エレガンスの縮図のようなこの街、アフタースキーのおしゃれにも余念がなく、毛皮の下はノースリーブのドレス。白木と剥製のインテリアの中、石窯で焼かれた素晴らしいピザが運ばれてくる。私は牛肉のカルパッチオ をチョイス、どちらもミラノのリストランテ並みの美味しさ。
 

 

   
 
快晴の朝、窓からドロミテ山脈を眺め、テラスに出るとお隣に昨晩のレストランの屋根が見える。目が慣れて来たとはいえ、壮大な山々と澄んだ空気に感激する。
 

 

 
ドロミテのスキー場群は南チロル、ベッルーノ、トレントの三州にまたがる九か所のスキー場によって構成され「ドロミテ・スーパースキー」と呼ばれる。リフト券も共通で共同で運営されるこのコンプレックス(連合体)は300を超えるロープウェイとリフト、全長コースは総計600キロをゆうに超えるという。コルチナ・ダンペッツォはそのほんの一部でこの規模というから驚く。
 

 

 
ドロミテ・スーパースキーの中心であるコルチナ・ダンペッツォ、鋭い岩峰とその麓に広がる牧歌的な森と丘陵によって独特な明るさを持つ魅力的なスキー場と街。世界中から明るい太陽の元で、スキーとおしゃれ、グルメを楽しみに人々が集まる。
 

 

 
ヨーロッパのスキー場はその殆どがアルプスの北側にあるけれど、イタリアのスキー場はアルプスの南側にあり溢れるような太陽の光に恵まれ、優れたデザインの施設、色鮮やかなファッションと陽気でリラックスしたイタリア人気質がスキーリゾートをさらに魅力的なモノにしているよう。リフトにもエンポリオ・アルマーニの広告、ベンチではワインを飲みながら日光浴する人々、日本とはあまりにも違う光景に驚く。
 

 

 
朝は空いていたレストランもお昼近くには満席に。イースターホリデーの週末、今シーズン最後のスキー場ランチを楽しみにおしゃれをして集まる人々、まるでミラノのリストランテのような華やかさ。メニュウがまた素晴らしく、季節のアスパラガスと卵とポレンタのフリット、ほほ肉のラグーを絡めたキタッラパスタも絶品、スキー場のランチとは思えない。
 

 

 
光に溢れた夢のようなランチの後はブティックを覗き、レンタルスキーを探索。ブーツも板もバリエーションが豊富でチューンナップのスペースも素晴らしい。ヘルメット着用がほぼ義務になっている事にも驚く。コルチナスキースクールのユニフォームもおしゃれ。
 

 

 
ランチの後は車で移動し、再びロープウェイでファローリアへ。レストランのデッキは日光浴をする人で溢れ、いかにもイタリアのスキーリゾート。Tバーリフトにもすっかり慣れ、今日はヴィテッリのコースに初挑戦。
 

 

 
ワールドカップの女子スーパー大回転が行われるコースを遠くに眺め、70年前に猪谷千春氏が銀メダルを取ったピストが目の前に広がる。しっかりと圧雪された壮大なゲレンデはカービングスキーが走る走る、体がついて行かないほど。
 

 

 
素晴らしいお天気に恵まれ、トファーナ、ファローリアと二つのスキーエリアを堪能。ホテルに戻りひと休みの後は街のスキーショップを覗く。子供の頃はいていたスキーブーツ「ノルディカ」はコルチナ発祥のブランドと知る。
 

 

   
 
昨晩に続きホテルのお隣のリストランテへ。今晩はコルチナ名物のアンぺッツァーナ風ラヴィオリと鹿肉のラグーのパスタをチョイス。ビーツをたっぷり詰めたラヴィオリの色も美しく、バターの風味とケシの実の食感が絶妙。鹿肉のラグーを絡めたフィットチーネも美味しく、プロセッコをお供に素晴らしいディナー。
 

 

 
3月の最終週からサマータイムが始まったヨーロッパ。20時を過ぎてもまだ明るく、山々をバックに暮れ行く街はあまりにも美しく、思わずそぞろ歩きの足を止める。コルチナは標高が高いため春まで雪が保てるので、サマータイム直後の今はスキーも街歩きも楽しめる。
 

 

   
 
イースターホリデーとあって街は夜まで賑やか。バールにはリゾート地ならではのおしゃれに身を包んだ人々が集い見ているだけでも楽しい。ミラノやパリとは格の違う洒落度はため息が出るほど、プロセッコやシャンパンを片手にお喋りは続く。
 

 

 
 
昨日の絶景が忘れられず再びトファーナに向かう。しかし今年は雪不足で昨日で終了との事、がっかりしつつも世界的な雪不足、地球温暖化問題を実感する。その昔は5月半ばまで営業していたと聞きなおさらその深刻さを想う。
 

 

 
気を取り直してファローリアに戻ると、標高が高いこちらのエリアは例年通り5月まで滑走可能と聞き安心。1956年のオリンピックのために作られたリフトに乗り、標高2120mのレストランへ。見渡す限り山が連なるトファーナ連峰、ファローリアより一段と高い標高から見下ろすドロミテ山脈、再び息を呑むような絶景に圧倒される。
 

 

 
チロルの山小屋のようなレストランに入ると、バーカウンターがありワインやビール、度数の高いぶどうの蒸留酒グラッパを飲んでいるのに驚く。私は温かいカプチーノを飲みつつ額装された絵のような景色に見入る。
 

 

 
360度山に囲まれるパノラミックな景観に圧倒され、滑り出すのが惜しく山を眺め深呼吸。記念撮影をするスキーヤーも多く、日本の琵琶湖で滑ったというイタリア人カップルが撮ってくれた貴重なスナップ。
 

 

   
 
ランチタイムになるとレストランのデッキは日光浴をしながらワインを楽しむ人で溢れ、室内は驚くほど空いている。スキー場とは思えない本格的なイタリアンに驚きつつ、リコッタチーズを詰めたハート型のラビオリをチョイス。ゆっくり味わいたいけれど、まだまだ滑りたい・・・。
 

 

 
最後の滑走を堪能して帰りのロープウェイに乗る。1993年、シルベスター・スタローン主演の映画「クリフハンガー」の舞台になったファローリア山、正に断崖絶壁の岩肌。向いにトファーナ連峰を望む絶景ともいよいよお別れ。
 

 

 
街に戻り教会のフレスコ画を鑑賞、初めてのヨーロッパスキー、初めてのコルチナ・ダンペッツォ、怪我も無く無事に過ごせたことを神様に感謝する。美しい街を後にヴェネチアに向けて出発。
 

 

 
voyage index ヴェネチアに向けて走る途中、70年前のオリンピック遺産であるジャンプ台が見える。ヴェネチアは運河と橋の街、スキーを持って歩くのは大変なので途中のドライブインでスキーをパッキング、マルコポーロ空港のバッゲージデポジットにスキーを預ける。 page top

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